Piano Mahogany


BUNGBOXオリジナル万年筆 第14弾

静岡県浜松市にあるBUNGBOXの店から、浜松を発信する商品を創りたい!
その熱い思いから発想した万年筆、【Piano Mahogany】(ピアノマホガニー)。
発想の日から3年の月日を経て、ついに完成の時がやってまいりました。

美しく輝くマホガニーのピアノのような万年筆!


以下は完成にこぎつけるまでの、長い道のりの記録です。

幼い頃にピアノレッスンに通っていた先生のお宅にあった、それはそれは美しいグランドピアノ。いつもは黒のアップライトピアノでのレッスンだったのが、ある日のレッスンで別の部屋に通されました。

そこに置かれていたのが、マホガニーのグランドピアノ。その赤みを帯びた、ぴかぴかなブラウンのボディに一瞬にして魅了された私。

そのピアノでレッスンしたのは、数回だったと思います。
幼いながらに、その鍵盤に指を置き、弾き始める時のドキドキ感を、いまだに覚えています。

東京出身の私が、浜松という都市を考えた時、すぐに思い浮かんだのは「楽器の街」でした。YAMAHA・KAWAI・APOLLO・ROLAND・SUZUKIなどなど、世界的にも有名な楽器の会社が名を連ねている街です。ピアノを習っていた経験から、浜松という街の文化を発信する商品として真っ先に頭に浮かんだのがピアノでした。

【Piano Mahogany】(ピアノマホガニー)

マホガニーのピアノは私にとっては憧れの存在。
そんな想いを抱いていた2011年10月、「あのマホガニーのピアノのような万年筆を創りたい!」その気持ちがとても強くなりついに実現に向けて始動。しかし、完成までの道のりは簡単なものではありませんでした。

最初のハードルは、軸の素材。
実際にピアノに使用されているマホガニー材と同じものを今回は使おうと思いました。そこで、ある方から某楽器会社のOBの方をご紹介頂き、さらに実際にその会社のピアノに使われているマホガニー材を納めている材木工場をご紹介頂くことができました。
そして、すぐにその工場のある愛知県の町を訪れ、仕入れの交渉をしました。つたない私の説明ではありましたが、その会社の社長さんは快く材料の提供を引き受けて下さいました。そして、サンプルのマホガニー材もいただけたのです。

素材は揃いましたが、その先にはまた問題が。
それは、軸の塗りです。あのピカピカに輝く、艶のある塗装方法。ピアノ鏡面艶出し塗装です。ここでもまず頼ったのが素材の時に紹介頂いた、楽器会社OBの方。
その方に紹介された浜松市内にある塗装会社の社長さんは、私の話を聞いても、なかなか首を縦に振ってはくれませんでした。パーツが小さすぎることで「ピアノのような広い平面に行うような塗装をするのは難しい」というのが理由でした。先方の社長さんも出来るかどうか分からないという疑心暗鬼の中、試作をしていただけることになり、なんとか塗装用のマホガニー色を出してもらう事は出来ました。この時点ではさらに半年の月日が流れていました。

軸はできたものの、細かいパーツの塗りのところでプロジェクトは暗礁に乗り上げます。なかなか解決策を見出せないまま、時間が過ぎ…「やはり、無理なのかしら…?」と諦めかけたりもしました。

そんな中、あるセミナーで知り合った方が、たまたま私の万年筆への想いの発表を聞いて声をかけてきてくださいました。その方も、これまでこの万年筆の件でご相談し、尽力いただいた方と同じ楽器会社OBの方。私が、「楽器の街浜松」を発信するために【Piano Mahogany】という万年筆を創ろうと動いてきた経緯をお話し、塗りのところで止まってしまっている現状を伝えると、同じOBで実際にピアノの塗装工をされていた方を紹介していただける事になりました。

早速お会いして、お話をすると当時80歳だったOさんの口から、「出来ないことはない。」という力強いお言葉。藁にもすがりたい思いの私に希望の光がさした瞬間でした。塗装会社の社長さんから、マホガニー色の塗料のサンプルを頂き、新たなチームで再スタートをきりました。

万年筆自体は、セーラー万年筆さんに依頼。同時進行でマホガニー材を渡して、含浸処理や耐久試験をしてもらいました。そして、バラバラの万年筆のパーツとなったマホガニーの小さなピースをOさんに渡して塗っていただきました。塗りが完成し、セーラー万年筆さんに渡して組み立ててもらうまでそこから約3ヶ月。

2012年9月、組み立てられた万年筆が私の手元に。
それは蓋がきちんと閉まりませんでした。ほんの少しでも塗料が厚く塗られると蓋が閉まらない。この時点でのセーラー万年筆さん言い渡された結論は不可でした。すでに構想から1年経過し突きつけられた事実。このときは非常に落ち込みました。

なんとか実現したいという気持ちから藁にもすがる思いで、蓋が閉まらない万年筆をOさんのところへ持っていき相談しました。するとOさんは目の前で何度もペーパーをかけては磨き、かけては磨きを繰り返し、見事に蓋は閉まるようになりました。
「出来る!」そう思った私は、再びセーラー万年筆さんに交渉しました。しかし、セーラー万年筆さんの方からはOさんが塗ったパーツを組立てるのは不可能という回答。理由は、塗りの微調整が必要な時に距離のある浜松と広島(セーラー万年筆さんの製造工場)では、何度も商品を移動させる事になれば現実的にコストがかかりすぎるという事。そして、商品の安全上の問題からも不可能という事でした。

でも、私は諦めませんでした。しぼり出した答えは、「Oさんが塗り方をセーラー万年筆さんの工場の職人さんに教えればいいんだ!」ということでした。

再び私はOさんに相談。結果は2~3日あれば教えられると意欲を見せてくださいました。そこでOさんを広島の工場にお連れし、工場の職人さんにその塗り方を教えてもらう話に。しかし、健康上の理由などからOさんを広島までお連れするのは難しいという結論になってしまいました。ここまできてあきらめることができない私は、直接工場に行かず、塗り方を書いた書類を送り、その下で工場の職人さんが塗り、塗ったものをOさんがみて判断していただくという方法を提案。Oさん監修でのプロジェクト再始動です。

鏡面艶出し塗装の工程は大きく分けて10工程あります。ひとつの工程にもいくつかの作業があります。かなり大変な作業です。その方法で、何度もやり取りをし、ようやく塗りサンプルのOKが出るまで1年以上がかかりました。

最後のハードルはキャップのネジきりでした。
これは、あるお客様から頂いたご提案から始まりました。セーラー万年筆80周年記念万年筆のネジきりの特殊性をご存知でしょうか。外そうとしてキャップを回すと、一瞬カクッという感触があります。この時点ではキャップは外れません。そこからもう1周させるとはじめてキャップが外れます。また、反対にキャップをしめる時には、最後にキューッ!と吸い込まれるようにキャップがしまる感触が味わえるのです。とても魅力的な機構だと思います。

この特殊なネジきりをつくるための鋳型はセーラー万年筆さんには既になくその復元をして頂くお話が決定するまでそこから半年程の時間がかかりました。それでもなんとか実現に向けて進み、この万年筆にとっての重要な3拍子がようやく揃いました。

オリジナルの万年筆を創る時、全ての仕様が固まらないと正式な見積りは出ません。人間、あまり長くかかるといろいろな意味で弛緩状態に落ち込みます。万年筆の構想をお聞き頂き、早期にご予約を頂いていたお客様もきっと…。不安を感じたのも事実でしょう。最後まで、限定数として決めた20本が出来上がるかもはっきりしませんでしたから。

そして、ようやく今年の6月に正式な見積りと納期が決定しました。今年の10月で3年。長い道のりです。このように、今までの道のりを書いていると改めて、よくぞここまで漕ぎ着けたと感慨無量です。そして、長い間お待ち頂いたお客様には感謝の気持ちでいっぱいです。
またこの万年筆は、万年筆ファンだけでなくピアノを演奏される方や、広く楽器を愛する方達にもぜひお持ち頂きたいです。

Piano Mahogany


セーラー万年筆プロフェッショナルギアマイカルタと同じ形。
天冠・キャップ・首軸・同軸・尻軸のすべてをその素材にて作成。

【素材】
実際にピアノでメーカーが使っているのと同じマホガニー材。

【塗装】
楽器メーカーが使用しているのと同じ塗装剤・WAXを使用。
塗り方は、元ピアノの塗装職人の監修によるもの。
ピアノ鏡面艶出し塗装。
キャップのネジきりにセーラー80周年の特殊機構を採用。
キャップリングにピアノ鍵盤を素掘り彫刻。彫刻。